婚約指輪の研究所

就職にしろ、結婚にしろ、自由化が起これば思いどおりにならなくなる、というパラドクスです。
選択肢が増えれば増えるほど、自分の思い描いた選択ができなくなる。
その結果が現在の急速な晩婚化、非婚化の進展となって現れているわけです。
以上は、統計から見て全般的にいえることですが、具体的な個別のケースからも、晩婚化と非婚化が進み、そして、結婚がもはや積極的な結婚活動なしにはむずかしくなってきていることかわかります。
男性、女性、それぞれに、今は結婚しない、できない理由があり、それらについては後の章で詳しくご紹介しますか、ひとこと言えば、社会経済的状況が変化しているにもかかわらず、意識そのものは昔とそんなに変わっていないということでしょう。
女性の多くは、やはり男性に経済的に依存したい、あるいは依存できるだけの力のある男性と結婚したいと思っていますし、一方、男性も男性で、自分は仕事だけをしていて、家庭のほうは妻に任せて、仕事以外のことに関わるのは定年後からでいいだろうと思っています。
こと結婚に関しては、いろいろな意味で、前の世代の負の遺産を引き継いでいるわけです。
さらに、結婚そのものについても、男女とも、自分で特に積極的に何かをしなくても、自動的にことが運んで、思いどおりの生活が送れるはずだと、いまだに思っている節があります。
たしかに、親の世代、昭和の時代はそうでした。
でも、今は違います。
特に男性については、バブル崩壊後のロスジェネ(ロストジェネレーション・不況による就職氷河期の十年間に就職した、一九七〇年代生まれの人たち)あたりから、経済格差による結婚のチャンスの格差も生まれてきているといわれています。
つまり、一部の男性のところに女性が集中し、そのほかの多くの男性には、結婚どころか、女性とつき合うチャンスすらないという状況です。
さらに悪いことに、そうしたいわけ「負け組」と自分で思っている男性たちの中に、すでに、生身の女性とつき合うことをあからめてしまっている層が多数存在することです。
これを女性たちの側から見るとどういうことかというと、もはや、かつてのように、待っていれば向こうからだれか、声をかけてくる、というようなことはないのです。
かくして、今まさに、「婚活」すなわち「結婚活動」の必然性がクローズアミフされてきたわけです。
ここ十五年ほど、未婚化・晩婚化の現象や、均等法以降の女性たちのライフスタイル、特に恋愛や結婚を取材しています。
特に結婚したいと願い、出会いを求めて「活動」している女性たちをウォッチしてきました。
そこであらためて実感したのは、男女ともに、結婚したくないから結婚しないのではなくて、結婚したいのにできない。
さらには、いかにも結婚できなさそうな男性や女性が結婚できないのではなくて、すぐにでも結婚できそうな感じなのに、結婚できないでいる人たちが、非常に多いということでした。
それはなぜでしょうか?具体的には、どういう人たちなのでしょうか?その一部は、いわゆる負け犬世代の女性たちを対象にした拙著『結婚したくてもできない男結婚できてもしない女』で、「彼女たちが仕事や自分磨きなどで自らの価値を高めた末に、ハードルが高くなりすぎて、結局つり合う男性がいなくなってしまった」として紹介させていただきましたが、五年経った今、状況は、男女ともに、「結婚したくてもできない時代」を迎えてしまいました。
実際五年前のインタビューで未婚だった女性が自分磨きをし、出会いを求めていても、未だ未婚のままです。
男性にいたっては、忙しさのあまり、流されるように未婚のままという状態です。
二〇〇〇年と二〇〇五年の国勢調査を見ると、前回調査(二〇〇〇年)で二十代後半たった女性たちは三十代前半になっていて、五四・〇↓三二・〇(%)と未婚率が推移しています。
三十代前半たった女性たちは三十代後半になっていて、七割の人が未婚のまま三十代後半へ。
これらが今、「負け犬」として、社会でもっとも活躍している均等法第一世代であり、酒井順子さんの同級生世代です。
そして三十代後半の未婚組は一三・八(%)と動かず四十代へと突入。
この世代が黒田知永子さんの同級生世代です。
つまり、今起きている現象はただの晩婚化ではなく、生涯一度も結婚しない人、希望するわけではないのに、未婚のままの人が増えていく現象だと思います。
では、どんな人たちか結婚していないのか?まず、女性のほうから見ていきましょう。
結論から申し上げると、ふつうのお嫁さんになりたいタイプの人ほど結婚できない。
つまり、従来型の結婚のパターンを求める人ほど、結婚できないでいます。
従来型の結婚というのは、男性に経済的に依存したい、男性かメインで稼いでほしいということです。
総合職ではなく、一般職や派遣で上場企業などに勤める女性によく見られるタイプで、実際、その多くが、結婚相手に今の自分の二倍の年収を望んでいます。
わたしは、これを「年収二倍の法則」と名づけました。
なぜ、「年収二倍」なのかというと、結婚当初は自分も働きますから、当面、生活水準は下がらないのですが、子どもができて子育てをしている間は仕事をしないという前提です。
その間、自分が稼いでいたぐらいの金額はプラスアルファで夫に稼いでもらわないと困ります。
となると、仮に自分の年収か現在四百万円だとすると、その倍の八百万円の年収の人とでなげれば結婚したくないと、こうなるわけです。
世の中は、女性の仕事と子育ての両立支援をうたっても、まだまだ両立に高いハードルを感じている女性が多いということです。
実際、Yさんの二〇〇二年の調査によると、東京では、未婚女性の四〇%が年収六百万以上の男性と結婚したいと思っているとのことですが、では、未婚男性二十五歳から三十四歳のうちに年収六百万以上の男性が何%いるかというと、たった三・五%です。
考えてみれば当たり前です。
そのくらいの収入の人は、とっくに結婚してしまっているわけですから。
かくして、従来型の「男性に依存したい、男性がメインで稼いでほしい」という結婚を望みつつ、丸の内などでOLをしているような女性たちか、条件(経済や望むライフスタイル)が整い、なおかつ「ときめき」を共有できるような男性と出会えるチャンスは非常に少ないということです。
さて、結婚したいのにできていない、もう一つのパターンは、いわゆる絵に描いたようなスーパーキャリアウーマンータイプの女性です。
美人で、仕事もできて、センスもいい。
仕事ができるだけではなくて、料理も上手にパパッと作るし、みんなを呼んでパーティーもできる。
趣味も広くて、お茶会に行ったり、フラメンコとか日本舞踊をやっていたり、もちろん、ゴルフもできる。
そういうスーパーウーマンたちも、やはり残っているわけです。
なぜかというと、こういうスーパーキャリアウーマンもまた、結局、先の依存型の女性と同じタイプの男性と結婚したかつているからです。
依存型の女性が結婚できていない理由は、彼女たちが望むライフスタイルを実現できる経済的な裏づけをもつ男性の絶対数か圧倒的に少ないからでした。
ところが、キャリアウーマンタイプ、つまり、自分で年収八百万以上は稼ぎ、だれかを養うこともできる自立型の女性たちが望むのも、要は依存型の女性と同じく八百万円以上は稼ぐ男性です。

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